廃線サイト 〜失われた鉄路を辿る〜

中央本線旧線(信濃境〜富士見)廃線跡

この区間は、1904年12月21日、韮崎(にらさき)〜富士見間開業によって開通しました。その後、輸送力の確保の為、複線化が進み、1980年9月に新線に切り替えられ、廃止になりました。

旧立場川橋梁が魅力の廃線

富士見町は長野県南部に位置しています。廃線の距離は僅か1.5kmほどと短いのですが、トンネルが3つに橋梁が1つある、非常に見所のある廃線跡です。しばらく道を歩いて行くと、富士見町総合運動場があり、そこに乙事トンネルと蛯沢トンネルが口を開けています。尚、乙事トンネルの出入口は訪問時は運動場側は口を開けた状態で反対側だけ完全に埋められていましたが、現在は両方とも完全に塞がれてしまっているようです。ちなみに乙事トンネルの信濃境側の入口は乙事地区農業集落排水終末処理場の施設が建っている場所です。建物が建っているので完全にトンネルは埋められています。


遠方から見た旧立場川鉄橋と乙事トンネル。

遠方画像
乙事トンネル

反対側に目をやると姥沢トンネルがあります。トンネルを抜けると少し薄暗い場所に出ます。ここには架線柱などが残されており枕木も発見できました。この先には旧立場川橋梁があります。こちらも訪問時はトンネルは通り抜けが可能でしたが、今では姥沢トンネルも完全に塞がっており立場川橋梁側へは抜けられないようです。


姥沢トンネルと旧立場川橋梁側の姥沢トンネル。

姥沢トンネル
立場川橋梁側

旧立場川橋梁は1904年(明治37年)に完成しました。廃止後もそのまま現存しているため、完成から100年以上も当時のまま残っています。橋梁を渡った廃線跡は、瀬沢トンネルへ向かっており、堤上には架線柱と枕木が残されています。線路や架線は撤去されていますが、枕木が土に少し埋もれながらあるのと架線柱がしっかりと残されているのが魅力的です。因みに旧立場川橋梁は上路ボルチモア・トラス構造です。そしてこの橋梁は詳しい時期はわかりませんが撤去される方針だそうです。


旧立場川橋梁と瀬沢トンネルへのびる廃線跡。

橋梁画像
堤上

堤上を富士見方面に暫く歩くと、瀬沢トンネルが見えてきます。このトンネルは現在では水路になっており、中には水が流れています。そのため通行するには長靴がないと少し厳しいです。トンネルは少しカーブしていて暗いので中を見るなら懐中電灯があった方が良いです。瀬沢トンネルを出た廃線はやがて現在線に合流します。


瀬沢トンネルと現在線と旧線の合流地点

富士見側出口
合流地点

この区間にある旧立場川橋梁は、宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』で富士見高原病院へのシーンに描かれています。また、安藤サクラさん主演の映画である「怪物」のロケ地にもなりました。色々な歴史を持つ橋梁が幕を閉じようとしています。撤去されてしまうのは町の負担を考えると仕方のない事なのかもしれません。